海域におけるサンゴ礁のモニタリング

■概要
 サンゴの分布状況などのモニタリングを効率的に行うため、鹿島建設株式会社が、「SWANS」を使用して、水面下の生物環境や地形情報を調査しました。

 従来のサンゴの調査ではダイバーによる観察や写真撮影が一般的ですが、波などの気象状況に左右されるため、広範囲の調査には時間を要します。また、沿岸には岩礁などの障害物が多く、船では調査地点に容易に近づけない場合もあります。一方、ドローンを用いた観測は短時間で広域の撮影が可能であるものの、上空からの観測だけではサンゴの種類や健全性の判別までは難しい点が課題でした。 

 そこで今回の実験は、水面浮体型ドローンを活用することにより、上空、水中両方の撮影によって、迅速かつ正確なモニタリングを試みました。

■実験詳細
 本機体は、浅海域における水生生物や地形の調査も可能な防水性能をもつドローンです。機体のローター部4ヵ所と中央部に浮力を持たせることで、水面への安定した着水を可能にしました。機体下部のドームポート内に搭載したカメラで上空からの俯瞰映像や水中の映像を撮影、GPSによる位置情報とともにリアルタイムで伝送・記録します。また、超音波式のセンサも搭載しており、サンゴの成育評価に必要な水深および海水温の計測を併せて行うことができます。

 本機体を活用しての調査手法では、GPSによる位置情報の活用によって、事前にコドラート(方形枠)やラインなどの目印を人力で海底に設置する潜水作業が不要となるため、調査時間を大幅に短縮するとともに、安全性も向上しました。

 今回の実証試験は、慶良間諸島海域のコーラルネット(※)を用いたサンゴ再生エリアを含め、約5,000㎡のサンゴ礁で行いました。上空からの俯瞰映像から暗礁部を確認し、操作者が定めたポイントまで飛行・着水後、水面上を移動させながら撮影を行いました。着水後の水中撮影により、サンゴの分布状況やその種類(属レベル)の判別までできることを確認しました。また映像記録を撮影地点の位置情報とともに蓄積していくことで、コーラルネットを活用したサンゴ再生エリアの継続的なモニタリングも可能になります。

■今後の展開
 今後は、本機体を用いての詳細な調査によりサンゴの海底マップを製作することでコーラルネットの効果的な配置計画を行い、サンゴ群集の再生に活かすことができます。また、撮影映像と追加搭載する各種センサから得られるデータを用いた、海底地形の3次元化や水質や流速などの海洋観測技術への応用についても検討しています。

※コーラルネット:鹿島建設(株)が生物多様性の維持に向け2013年にサンゴ郡の再生技術として開発した人工基盤

SWANSの着水状況(提供:鹿島建設)
SWANSによって撮影したサンゴ群集(提供:鹿島建設)
着水後の水中画像(提供:鹿島建設)

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